円安傾向が進むことによってコストプッシュ型の物価上昇が起きています。物価上昇の要因の一つに政策金利の違いが話題となり、各国の中央銀行が注目されています。今回は中央銀行についてあまり知らなかった方向けの記事です。
中央銀行の歴史を振り返り、なぜ必要とされたのかといった背景から中央銀行との関連性の強い国債に対する理解も深めていきたいと思います。
代表的な中央銀行
日本銀行
日本の中央銀行で、日本銀行法に基づく認可法人であり、政府機関や株式会社ではありません。金融政策の決定や実施、紙幣の発行などを行います。1882年に設立されました。
連邦準備制度理事会(FRB)
FRBは金融政策の決定や実施、通貨の発行、銀行の監督などを行う重要な機関です。FRBの決定はアメリカ国内だけでなく、世界経済にも大きな影響を与えます。1913年に設立されました。
欧州中央銀行(ECB)
ユーロ圏の中央銀行で、ユーロの発行や管理、金融政策の策定と実施を担当します。ECBは1998年に設立され、翌年にはユーロが誕生しました。
イングランド銀行
イギリスの中央銀行であり、金融政策の策定と実施、通貨(ポンド)の発行などを担当します。イングランド銀行は1694年に設立されました。
国債を初めて発行した中央銀行
国債の歴史
中世のヨーロッパにおいて、戦費の資金調達は国王の個人的な借金として金融業者や大商人から資金調達をしていました。その返済のためやさらなる戦費の調達のために国民に重税を課されていました。
国王個人の借金という形は踏み倒されるリスクが高かったことにより、国王個人ではなく、国家が債権を発行する仕組みが取り入れられ始めました。これが国債の始まりです。
国債を初めて発行した中央銀行はイングランド銀行
国債を初めて発行した中央銀行は1694年に設立されたイングランド銀行です。当時のイギリス政府がフランスとの戦争(第2次英仏百年戦争)に突入し、軍事費の調達が急務となったことが背景にあります。政府は資金調達のために、銀行を設立して国債を発行することを決定しました。
国債とは、国家が発行する債券のことで利子や元本の支払いが国家から保証されているのが特徴です。
設立当初、イングランド銀行は政府に120万ポンドを貸し出し、その見返りとして国債を受け取りました。この国債は年利8%であり、銀行はこれを基に紙幣を発行することができました。これにより、政府は必要な軍事費を調達し、銀行は信用力を高めることができました。
このようにして、イングランド銀行は設立され、国債の買い取りを通じて政府の財政を支援する役割を果たすようになりました。

国債の信用度が高いといわれる理由
設立当初は国王個人ではなく、国家が返済を約束することから信用度が高まり出資者にとって安全な投資先となりました。時代が進んだ現代でも国債は信用度が高いと評価されます。その理由を簡単に説明していきます。
発行主体の信用力
国債は政府が発行する債券であり、政府の信用力に基づいています。政府は税収や他の収入源を持っており、通常は債務を返済する能力が高いと見なされます。
リスクの低さ
国債は一般的にリスクが低いとされています。政府がデフォルト(債務不履行)する可能性は非常に低いため、投資家にとって安全な投資先と見なされます。
法的保護
国債は法的に保護されており、政府が債務を履行する義務があります。これに対して、企業の株券は法的保護が少なく、企業が破綻した場合には投資家が損失を被る可能性があります。
戦費調達が目的だったが今は?
国債が発行されるようになった当初は戦費調達が主な目的でした。現代では毎年政府が決定する予算の補填として国債を発行しています。
国債を償還するために税収を上げたい政府
日本は借金だらけといったワードをよく耳にすると思います。この借金がこれまで説明してきた国債です。国債の償還は税収で行っていますので、増税が必要というのが政府の言い分です。
これを会社として考えてみると、企業の借り入れを返済するために社員の給与を減らすといっているのと大差ないと考えることができます。借金を返済し社員に正当な給与を支払うためには企業の売上を向上させることが必要です。
政府はどうでしょうか。経済が成長し今のようなコストプッシュ型ではない健全なインフレが進めば、税収は増え国債を償還できるようになる可能性があります。ただ増税をするだけでは経済は成長しません、むしろ停滞する可能性があります。
増税が目立ってしまいますが、政府としては経済成長に向けた取り組みも実施しています。経済を成長させるための正しい投資が政府としてできているか、国債を起点にこういった視点で政府の取り組み政策を見る良いきっかけにしてみるもの良いでしょう。