クラウドの設定ミスが情報漏洩の原因に?今すぐ確認したいSaaS/IaaSのセキュリティ設定

近年、ビジネスにおけるクラウドサービスの利用はもはや当たり前となっています。SaaS(Software as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)は、業務効率化・コスト削減を後押ししています。

方で、クラウドの設定ミスが原因で企業の機密情報や顧客データが漏洩するケースもあります。「まさかうちが…」と思うかもしれませんが、設定ミスによる情報漏洩は誰にでも起こりうる、非常に身近なリスクなのです。

「クラウドはベンダーがセキュリティをやってくれるから安心」 とというわけではありません。クラウドには「共有責任モデル」という考え方があり、どこまでがクラウドベンダーの責任で、どこからが利用企業(あなた)の責任なのかが明確に定められています。多くの場合、クラウド上での設定ミスは利用企業側の責任となります。

本ブログ記事では、情報漏洩を防ぐために確認すべきSaaS/IaaSのセキュリティ設定のポイントをわかりやすく解説していきたいと思います。

目次

なぜクラウドの設定ミスが起こるのか?

情報漏洩の多くは、悪意あるサイバー攻撃だけでなく、設定不備といった「ヒューマンエラー」によって引き起こされています。

知識不足・誤解

クラウドサービスの機能が多岐にわたり、セキュリティ設定の項目も複雑であるため、正しい知識がないまま設定を進めてしまうケースです。

確認不足・手作業

大規模な設定変更や多数のアカウント管理を手作業で行う際、見落としやミスが発生しやすいです。

デフォルト設定の危険性

サービスによっては、デフォルトで「公開」に近い設定になっているものや、最小限のセキュリティ設定しか施されていないものもあります。

変化への追従不足

クラウドサービスは日々進化し、新しい機能やセキュリティ設定が追加されます。これらを継続的にフォローし、設定を見直す体制が不足していると、セキュリティホールが生まれる可能性があります。

今すぐ確認!SaaS/IaaSセキュリティ設定チェックリスト

「では、具体的に何をすればいいのか?」という方もいらっしゃるかと思いますので、SaaSとIaaSそれぞれで特に重要なセキュリティ設定項目をまとめました。まずはこのチェックリストを使って、自社の現状を把握することから始めましょう。

1. すべてのクラウドサービスに共通する重要ポイント

アカウントとアクセス管理の徹底

多要素認証(MFA)の強制

すべてのユーザーアカウント(管理者含む)でMFAが必須になっているか確認します。IDとパスワードだけでなく、スマートフォンアプリやハードウェアトークンなど、複数の認証要素を用いることで不正ログインのリスクを大幅に低減できます。

最小権限の原則

ユーザーやシステムに必要な「最小限の権限」のみを付与しているか確認します。

例:一般ユーザーに管理権限や機密情報へのアクセス権限が付与されていないか、不必要なアカウント(退職者、テスト用など)が即座に削除または無効化されているか 等

パスワードポリシーの強化

パスワードの複雑性、有効期限、再利用禁止などのポリシーが設定・適用されているかを確認します。

ログの監視と監査

ログ記録の有効化と保管

誰が、いつ、どこから、何にアクセスしたか、どのような操作を行ったか、などのログが適切に記録されているか、監査のために十分な期間、ログが安全に保管されているかを確認します。

ログの定期的なレビューと異常検知

定期的にログをレビューし、不審なアクセスや操作がないか、SIEM(Security Information and Event Management)ツールなどを活用し、異常な振る舞いを自動で検知する仕組みを導入しているかを確認します。

データ暗号化

保存データの暗号化

クラウドストレージに保存されるデータが、暗号化されて保存されているかを確認します(多くのクラウドサービスはデフォルトで暗号化されていますが、確認は必須です。)

転送データの暗号化

データがクラウドとローカル間、またはクラウドサービス間で転送される際に、SSL/TLSなどの暗号化通信が利用されているかを確認する。

2. SaaS特有のセキュリティ設定チェックリスト

SaaSは手軽に導入できる反面、設定次第で意図しない情報共有が起きやすい特性があります。

共有設定のデフォルト確認

ファイル共有、ドキュメント共有(Google Drive, Microsoft 365 SharePointなど)、プロジェクト管理ツールにおいて、新規作成時の共有範囲が「組織内限定」や「非公開」など、適切なデフォルト設定になっているかを確認します。

外部連携アプリケーションの管理

利用しているSaaSと連携している外部アプリケーションやアドオンを把握しているか、これらのアプリに付与されている権限は適切か、不必要な連携は解除されているかを確認します。

ゲストアカウントの管理

顧客やパートナー向けのゲストアカウントが発行されている場合、有効期限やアクセス範囲が適切に設定・管理されているかを確認します。

APIキーの管理

SaaSのAPIを利用している場合、APIキーが安全に管理され、不必要に公開されていないかを確認します。

3. IaaS特有のセキュリティ設定チェックリスト

IaaSは非常に柔軟性が高い一方で、OSやネットワークといったインフラレイヤーのセキュリティは利用企業側の責任が大きくなります。

ネットワークセキュリティ設定

セキュリティグループ/ネットワークACL: (AWS Security Group, Azure NSGなど)

必要なポートのみが開かれ、不要なポートは閉じられているか、特定のIPアドレス範囲からのアクセスのみを許可する(例:管理用IPアドレスのみSSH接続を許可)など、最小限のアクセスルールになっているかを確認します。

VPC/VNetの設定

プライベートなリソースはパブリックネットワークから分離されたVPC/VNet内に配置されているか、必要な通信経路のみが設定されているかを確認します。

ストレージバケットの公開設定: (Amazon S3, Azure Blob Storageなど)

データが保存されているストレージバケットが、意図せず「パブリックアクセス可能」になっていないか、特に機密情報を含むバケットは厳重に管理されているかを確認します。

IAMロールとポリシーの適用

サーバーやサービスに割り当てるIAMロール(AWS)やマネージドID(Azure)に対して、最小限の権限を持つポリシーが適用されているかを確認する

OS/ミドルウェアのセキュリティ設定

利用しているOSやミドルウェア(Webサーバー、データベースなど)に対して、セキュリティパッチが最新の状態に適用されているか、デフォルトパスワードの変更、不要なサービスの停止、ファイヤーウォールの設定など、OSレベルでのセキュリティ強化が施されているかを確認します。

脆弱性スキャン・侵入テスト

デプロイされたIaaS環境に対して、定期的な脆弱性スキャンや侵入テストを実施しているかを確認します。

今すぐできる対策と継続的な改善

このチェックリストを確認するだけでなく、以下の対策を継続的に行うことが重要です。

1. 現状把握と優先順位付け

チェックリストを使って自社のクラウド環境の現状を評価し、リスクの高い項目から優先的に対策しましょう。

2. セキュリティルールの策定と徹底

クラウド利用に関するセキュリティガイドラインや運用ルールを明確に策定し、全従業員に周知徹底しましょう。

3. 従業員教育の実施

クラウドセキュリティに関する継続的な教育やトレーニングを実施し、セキュリティ意識の向上を図りましょう。

4. 専門家への相談・セキュリティ診断の活用

自社だけでの対応が難しい場合や、より高度なセキュリティ対策を講じたい場合は、外部のセキュリティコンサルタントや診断サービスを活用することも有効です。

5. 定期的な見直しと改善

クラウドサービスは常に進化しており、新たな脅威も出現します。一度設定したら終わりではなく、定期的にセキュリティ設定を見直し、必要に応じて改善するプロセスを確立しましょう。

まとめ

クラウドは現代ビジネスに不可欠なインフラですが、その利便性の裏には、設定ミスによる情報漏洩という大きなリスクが潜んでいます。しかし、このリスクは適切な知識と継続的な対策によって、大きく低減することが可能です。

今回ご紹介したチェックリストは、情報漏洩を防ぐための第一歩です。「うちは大丈夫だろう」ではなく、「もしかしたら設定ミスがあるかもしれない」という意識を持ち、今すぐ自社のクラウド環境を見直してみることをお勧めします。

安全なクラウド利用は、企業の信頼と成長に直結します。今日からできることから始め、強固なクラウドセキュリティ体制を築き上げましょう。

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