以前、超初心者向けに半導体についての記事をまとめました。今回は初級者向けに少し複雑な半導体業界のサプライチェーンをわかりやすく理解できるように短く簡単にまとめた記事となります。半導体の技術的進歩はイノベーションに大きく関わってきますのでビジネスに関わっている方は知っておくと良いでしょう。
超初級者向けの記事はこちら↓

半導体の製造の3つの工程
半導体の製造工程は大きく分けると設計・製造・組立の3つとなります。
設計
半導体の機能や性能を設計する工程です。CPUで有名なインテルのCoreシリーズやAMDのRyzenシリーズですが、インテル製とAMD製では性能に違いがあるのはもちろんのこと、Coreシリーズ(例えばi5とi7)によって性能が異なります。半導体の性能の違いは設計の違いといっても過言ではないでしょう。

製造
その名の通り半導体の製造を行います。下の写真のような円盤(シリコンウエハーと呼ばれます)で製造されます。一つの円盤に複数の半導体チップが製造されています。

製造の工程をさらに細かく分けていくと、①露光(シリコンウエハーへの回路の転写)、②エッチング(回路の形成)、③洗浄(ごみの除去)、④平坦化(ウエハー表面を平らに)、⑤成膜(半導体はいくつもの層が重なり合って構成されるため膜を貼り、さらにその上から①の工程を行うことで完成させる)となります。
組立
製造工程で説明したように一つの円盤(シリコンウエハー)に複数の半導体チップが存在します。それを一つの半導体チップとして組立てパッケージしていく工程です。簡単に説明するとシリコンウエハーから一つの半導体チップを切り出し、樹脂でパッケージし印字をしていく作業です。それが完了すると下の写真のような半導体が出来上がります。

半導体に関わる企業の種類
半導体のサプライチェーンは説明した3つの工程(設計・製造・組立)に加え、販売までの一連のプロセスを指します。まずは3つの工程に関するサプライチェーンの理解を深めていきましょう。
販売については半導体の種類などによって出口が異なり複雑な説明となるため今回は省きます。
3つの工程に直接的に関わる企業の種類
IDM(Integrated Device Manufacturer)
IDMは、半導体の開発、設計、製造、販売をすべて自社で行う企業です。代表的な企業は、インテル、サムスン、キオクシアです。
ファブレス
ファブレス企業は、自社で工場を持たず、設計を主体にしている企業です。製造は外部のファウンドリーに委託します。代表的な企業は、エヌビディア、クアルコムです。
ファウンドリー
ファウンドリーは、ファブレス企業が設計した半導体の製造を請け負う企業です。代表的な企業はTSMCです。
OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)
OSAT企業は、半導体製造の後工程(組み立てやテスト)を行う企業です。中国系の企業が多くの割合を占めており、米国を中心としてインド・欧州にOSAT企業を設置するなどサプライチェーンからの排除に動いています。
半導体のサプライチェーンを初めて知った方はまず直接的に関わる、IDM・ファブレス・ファウンドリー・OSATは理解しておきましょう。
3つの工程に間接的に関わる企業の種類
設計をサポートする企業(EDAベンダー、IPプロバイダー)
EDA(Electronic Design Automation)はその名の通り、半導体設計の自動化製品です。IPは半導体の設計に必要となる知的財産のことを指します。
製造するために必要となる材料を提供する会社
シリコンウエハーはその名の通り、シリコンが材料として使用されています。日本では信越化学が有名です。その他、エッチング・成膜・パッケージでも様々な材料が使用されています。(ゲルマニウム、セレン、炭化ケイ素等)
半導体を製造する装置を提供する会社
回路を転写する装置、エッチングをする装置など工程ごとに必要となる装置を提供する会社です。日本では東京エレクトロン、DNPが有名です。
国単独で半導体を製造できないためサプライチェーンが話題となる
これまで3つの基本的な工程をもとにサプライチェーンを説明してきました。設計・製造・組立まですべて行うIDMという企業がありますが、IDMも材料・製造装置は別の企業から取り寄せています。
簡単に各国の強みを説明すると、IDMは米国・韓国、設計は米国、製造は台湾、組立は中国、材料・製造装置は日本といった構図となっています。高性能な半導体は国単独で製造することができないため、サプライチェーンの課題が新聞やニュースなどで取り上げられています。
半導体はPC・スマホのみならず様々な製品に利用されており、半導体が製造できなくなると現在の生活を続けていくことは困難です。組立工程は中国に依存していることから台湾有事の際に生産がストップするといったことは避けたいと考えることは当然の判断でしょう。また、中国に重要な技術が流出する懸念もあります。
半導体のサプライチェーンを知り各国の強みを知ることがポイント
まずは半導体のサプライチェーンを理解し、そのサプライチェーンにどのように各国が関わっており強みを持っているのかを理解しましょう。現状を把握できたら、次のステップとして各国がその勢力図を変えるためにどのような策を実施するかを継続的に見ていくことをお勧めします。